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衛生管理

『病院・歯科医院の知られざる汚染水』 (財界展望2003年6月1日号)

「環境ホルモン」野放しの日本の水道行政

■病院や歯科医の水は雑菌で汚染

さて、前々号で学校プールをめぐる消毒用の塩素信仰の危険性について、横浜市衛生研究所の調査結果をもとにその危険性を報じた。

実は、案外知られていないことだが、病院で使われている治療水が雑菌だらけという、驚くべき調査結果が手元にある。

もともと病院はありとあらゆる病人が治療に訪れるところだから、病院そのものが「病原菌の巣である」ことは言うまでもない。世界保健機関が緊急事態として世界に警告を発したSARSの場合、香港にしろ、ベトナムにしろ、多数の患者発生は病院からだった。

人の健康をあずかる病院の治療水が雑菌だらけという問題に関しては、かつてフランス随一のハイテクシステムを完備したパリの「ジョルジュ・ボンピドー欧州病院」が入院患者に多発した病原菌問題で、開業後わずか八カ月で閉鎖の危機に直面したことがある。

原因は本誌四月号でも触れたレジオネラ菌(在郷軍人病)だった。十二月の開業後、翌年の三月にレジオネラ症の患者が九人も発生、うち四人が死亡した。レジオネラ菌は肺炎症状を引き起こし、治療が遅れると死亡するケースも多い。

レジオネラ菌は、空調用冷却塔や給水器でしばしば大繁殖し、水滴とともに肺に吸い込まれた場合、肺炎症状を引き起こす厄介な病原菌だ。この菌は、水を介して感染するためジョルジュ・ボンピドー欧州病院の場合、慌てた病院側がシャワー使用を禁止したりしたものの、感染源が判明せず、『フィガロ』紙が、同病院は「閉鎖か」と報じる騒ぎとなった。

この騒ぎが日本に伝えられた後、「国内での現状を知るため、全国でも有数の大病院の飲料水を汲み取って検査した。その結果は大腸菌どころかブドウ球菌や緑膿菌まで大量に検出されたのです」と、大病院の飲料水をめぐる雑菌汚染の深刻さを告発する水専門家もいるし、そのリポートもある。

大病院の飲料水や治療水が大腸菌や緑膿菌など雑菌に汚染されている原因は、病院の屋上などに設置されている給水塔の汚染によるケースがほとんどだとされている。
「給水塔以上に汚染が加速しているのは、実は地下水槽だった。その雑菌による汚染のひどさは屋上の給水塔の比ではなかった」とも前述氏は語っている。

病院側が給水塔や地下水槽の清掃をこまめに、丹念に行えば問題はないのだが、多くの大病院の場合、そこまで手が回らないのが実情とされている。

病院であるがゆえに、入院患者や通院患者が大腸菌や緑膿菌で腹痛を起こしてもすぐに治療するから大事には至らないが、ジョルジュ・ポンピドー欧州病院のようにレジオネラ菌による患者が発生したらそれこそおおごとだ。現実に、かつて慶応大学病院でもレジオネラ菌による院内感染で肺炎を起こした新生児が死亡する出来事も起きているのだ。

病院と言っても歯科医院の場合、治療に使う水が細菌で汚染されている。このことが、日本のある大学助教授の調査で明らかになり、衝撃を与えた事実もある。
「歯科医が歯を削ったり、洗浄したりする際に使う水に含まれる非病原性の細菌数は、アメリカ歯科医師会(ADA)が堆奨する細菌数に比べ、約一〇〇から二五〇〇倍になっていることが、東京医科歯科大学大学院の荒木孝二助教授らの調査で二十三日までに分かった。免疫に異常がある人に影響が出る可能性も指摘されている」(『毎日新聞』二〇〇一年六月二十三日)

荒木助教授らの調査では、「デンタルユニット」と呼ばれる歯科医師の標準的な治療装置五台で患者の口に噴きつける水を採取。これを二五度の温度で七日間培養して検出する標準的な方法で細菌体数を調べたとされている。

その結果、朝の始業直前の採水では、口内洗浄用水では一ミリリットル当たり平均約五〇万群体、歯の研削装置から出る水では、同約二五万群体を検出している。こういった問題でも基準が厳しいアメリカ歯科医師会では、二〇〇群体以下の目標値を設定している。

夕方における終業後の検査では、細菌数が約一〇分の一に減っており、こうしたことから、夜間、直径数ミリ程度のパイプに水が蒸留している間に、細菌が繁殖しやすくなると結論づけられている。

この検査で検出された細菌は「従属栄養菌」で、この細菌では一般の人の病気の原因にはなりにくいから、さほど問題化していない。

だが、大病院の給水塔や地下水槽を繁殖源として大腸菌や緑膿菌が病院の飲料水から検出されるケースが続出している問題は、やがて大きな間題となる危険性を孕んでいる。

なぜなら「新たな人類の脅威」とされるSARSの感染経路として、「水の媒介」が指摘されており、ベトナムの病院での院内感染は「水を媒介にしている」との疑念がWHOからも指摘されているからだ。

こういった間題を含めて、病原菌や有害物質に汚染された「水道水の危険」から国民が身を守るのは「個人の責任」とされるとき、浄水器のあり方も、国民の健康問題を論じるとき「今日的緊急性を持つテーマ」の一つでもあることは、言うまでもない。